歯科医院には、お悩みを抱えつつ困った顔をした患者さんが多く訪れます。そんなとき、診断結果を淡々と話したところで、逆効果のような気がしてきます。しかし、「そんなに思い詰めないでくださいよ、大丈夫ですから明るくいきましょう」と一言切り出すだけで、雰囲気がガラっと変わります。定期健診へ訪れた患者さんにしてもそう。「とてもいい状態ですね」などと褒めると、患者さんに自信が生まれて、行動をより好ましい状態へいざないます。なぜなら、研究と実績に裏打ちされた歯科医師が言う言葉だからです。
私は大学で、口腔(こうくう)総合診断学を学んできました。簡単に言うと、患者さんの行動の中にどのような考えが潜んでいるかを研究してきたのです。加えて、歯科医師による言葉の重みも含まれます。その言葉ひとつで、患者さんが傷ついたり救われたりしますから。ただし、ハッピーやスマイルだけを心がけているわけではありません。症状を軽く考えている方には、緊急性・重要性に気付かせ、しっかりと向かい合っていただく必要があります。
今後、高齢社会が進むにつれて、原因が見られないのに痛みなどを感じる「不定愁訴」のケースも増えてくるでしょう。このような場合、「何ともありませんから大丈夫です」という言葉は、むしろ不安につながりかねません。時と場合、症状などによって適切な言葉を選び、患者さんに納得の笑顔をもたらすこと。それが、当院の診療理念です。もちろん、お子さんでも同じこと。3歳児には3歳児の安心・納得があるでしょう。